三代目小坂園
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創業の地・大森は昭和初期まで海苔漁業が盛んに行われていました。会社設立間もない頃は、海苔やお茶を扱ってほしいと、小さな酒屋さんを回ったそうです。何で酒屋さんだったかは不明ですが(笑)そんな祖父は人当たりもよく、正月にみんなで集まった際は小唄で場を盛り上げてくれる人間味あふれる人でした。父曰く「誠実に生きなさい」が口癖だったそうです。

今でも祖父から付き合いのあるお店が2件ほど残っています。そこの酒屋の常連さんは小坂園のお茶でないと口に合わないそうです。60年経った今もうちのお茶を求めてくれる人がいることは本当にありがたいです。最終的に祖父の卸売業は失敗に終わりますが、高度成長の追い風にのり、第二幕「父の小売業」で少しづつ挽回していきます。

 

父は馴染みの酒屋さんから誘いを受け、「大森町市場」という場所でちっちゃなお店を構えました。そこは体格のいい父が縮こまり、お客さん2人が入れば満員。店内にはお茶・海苔・しいたけ・昆布など、所狭しに飾られていた記憶が思い出されます。

その市場には、魚屋さん・八百屋さん・肉屋さん・薬屋さん・おでん屋さん・洋菓子屋さん・酒屋さん・薬屋さんが一体となり活気に溢れていました。今で言うショッピングモールではなく、人のつながりそのものでした。店の前を通るごとに、それぞれの店主さんが声をかけ元気をくれました。物が少なかった時代は、物々交換じゃないけど、みんなで助け合う意識を持って生活してました。大森町商店街にはその感覚が今でも残っています。

もちろん、モノを買うのにお金が対価になるのは当然で、会社として運営できません。ですが、昔の商人はそれだけじゃないんです。人が困っているから、うちの商品で役に立つことがあれば使ってねって。そういった感覚が私に染み付いているのは、この市場で働いていた皆さんのおかげだと感謝しています。

 

父は商業高校出身。今ではめっきり聞かなくなりましたが、商人・あきんどです。例えば、お年寄りのお客さんが割りばしは売ってます?と来店すれば、近くの店で取り寄せます。せっかく小坂園に来てくれたのだから、その人のために役立つことをする。それが父の考える商人です。

私は商売仕立ての頃、その商売方法が理解できず、喧嘩ばかりしていました。しかし、あるお客さんの電話を受けたことをきっかけに意識が変わりました。

「お茶屋さん、はんぺん買ってきて」

お茶屋なのだから、良質な茶葉を仕入れる。お茶の知識を深めることがお客さんのためになると努力した何年かございます。もちろん専門知識は重要ですが、小さなお店にお客さんが求めることはそんなことじゃありません。お年寄りの活力になってあげる・買い物できない方に配達してあげる・地域の交番代わりになる・小売店で買い物する場を残してあげる、言葉で表すのは難しいですが、モノ売りじゃないんです。買い物をする対話なんだと思います。

それを実践するにはどうすればいいのか。お客様に感謝されるにはどうすればいいのか。感謝されるには、まず自分が人を感謝しなければならない。当たり前ですが、意識しなければ態度に出るはずもない。そのことを言葉ではなく、態度で教えてくれたのは父です。まだまだ足元にも及びませんが、父のように心の広い人間になれるよう精進いたします。